実験・実習風景(2008年度)


このコーナーでは,環境科学専攻の生命科学関係の実験・実習風景とトピックスを紹介します。

2007年度はこちらです。


2008年度の植物観察実習が無事終了しました(2008年9月27日)

 4月下旬から開始した植物観察実習(3年生の生命環境野外実習と2年生の生命・地球環境科学実習I)が,今日の3サイクル目の最終班の2年生実習を最後に無事終了しました。両実習合わせて33回(2年生のべ13回,3年生のべ20回)にも及ぶ野外での植物観察=写真撮影であり,しかも,今年は全員がデジカメ撮影しましたので,膨大な数の植物写真とともに終えたことになります。まだ,8月以降のものは未整理ですが,すべて整理するとおそらくは150〜200種類くらいの植物を,全員が写真に納めたことになるでしょう。また,33回分すべてを合わせるならば,300種類以上になるかもしれません。貴重な実習の成果ですので,今後に役立ててもらいたいものです。

 さて,今年度最後の実習は,めまぐるしく天気が変わる「何とか心と秋の空」の一日でした。雨を車の中や木の下で避けながら,晴れ間をねらっての植物観察でした。私のメインの実験材料のキクイモも撮影対象になりました(右の写真)が,一番のねらいは恵山のエゾオヤマリンドウ(左の写真)でした。もう終わり近くでしたが,雨の間隙を縫って,無事撮影成功です。

 2年生の実習は一日がかりで亀田半島を一周し,多様な環境に生育する多様な植物を観察することがねらいでした。環境がかなり違う3地点(山地の渓流沿い,活火山,海岸)での観察がメインでしたので,かなり珍しいものも含めて,今までになく多様な植物を観察できました。いずれきちんと整理した上で,このHP上で紹介したいと思います。

 3年生の実習は,9月24日の函館山で終わりました。全体的に寂しい雰囲気でしたが,オクトリカブト(右下の写真)が特に目立っていましたので,写真で紹介しましょう。この実習では,函館山は一週おき,赤川の亀田川上流沿いと見晴公園を一月に一度定期的に調査しましたので,昨年度には撮影できなかった植物の写真が数多く撮れました。この実習では,学生自身が同定を行いました。間違いもかなりありますので,その訂正とともに,半年間の観察結果の総まとめと3カ所の植生の比較を行わせたいと考えています。どのような結果が出るか,楽しみにしていましょう。

 5月赴任予定だった新任教員の大穴は埋め切れませんでしたが,その分,植物にたっぷりと浸った半年間だったと思います。私自身の勉強にもなりましたが,多少でも学生の成長につながったのならば苦労が報われます。果たして成果はいかほどだったのか,来年度に生かすためにも,今後検証する必要があるでしょう。

 秋の植物は内陸ではキクイモ,海岸ではコハマギクを最後に終わりますが,もう雪虫が舞い始め,季節は冬へ向かってまっしぐらです。紅葉の季節を最後に植物観察はもうすぐ終わりです。


2008年度の植物観察実習が一サイクルを終えました(2008年6月7日)

 今年度の実験・実習は,学年進行により2年生と3年生の二学年分となり,これらを平行して進めています。特に野外実習は,生物系の場合は大人数ではできませんので,少人数のグループに分けてこまめに指導していますので,3年生は月平均1.5回,2年生は2月に1回のペースで,私の指導でフィールドに出ます。6月に入り,2,3年生いずれも一サイクル目を終了しました。まず今年度最初として,2年生の生命・地球環境科学実習Iの一サイクル目の様子を紹介しましょう。尚,ここでは実習風景の写真のみ紹介し,本文中で触れた植物については,近々「季節のトピックス」で再度紹介しましょう。

 今年度は,昨年度の発展ということで,3年生のフィールドを昨年度と同じ場所に設定し,より短い間隔でかつ自主性を発揮しながら調査することにしました。それとのバランスもあり,2年生の実習フィールドを合併前の旧4町村に設定し,4グループに分けて,2週に一度,土曜日日中すべてを使って調査することにしました。目的は,多様な環境に生育する多様な植物を観察することにより,環境と植物との密接な関連を実地に知ることです。そのために,内陸部に2,3カ所,海岸部に2,3カ所,そして,恵山の火口原にフィールドを定めました。

 第1グループは,4月26日の川汲公園の調査からスタートです。ここでは,数多くのスプリング・エフェメラル達に混じって,ナガハシスミレ(テングスミレ)が随所に群落を作っていました。また,最終目的地の原木では,見事なカタクリの大群落を楽しむことも出来ました。春先が暖かかったこともあり,予想以上のダニに悩まされながらも,まずは順調なスタートでした。

 第2グループは,連休明けの5月10日です。この日も好天に恵まれ,新緑が眩しい中での調査です。一回目よりも大分暖かくなりました。川汲公園では,ムラサキヤシオが満開でしたが,ナガハシスミレは全て開花を終え,季節が大きく移り変わりつつあることを実感しました。また,途中で昼食休みをとった公園内に,シロイヌナズナが広く生育していることを知りました。更に原木では,コヨウラクツツジの分布を確認することも出来ました。

 第3グループは,5月24日です。この日も好天に恵まれ,絶好のフィールドワーク日和でした。この回からは,より自然の中での調査を重視するために,人手がかなり加わっている川汲公園はカットし,まずは,八木川沿いの林道での調査を行いました。ここでは,ヤマツツジが満開に近づき,サラサドウダンも咲き始めていました。恵山火口原では,イソツツジも咲き始めていました。春と初夏の植物が同居する,季節の遷移を感じさせる一日でした。

 最終グループは,6月7日です。季節は初夏です。この日は一番天気が心配された日であり,案の定,川汲峠を越えるまで小雨がぱらつく不安なスタートでした。しかし,峠を越えて川汲側に入ると,青空が広がり始めました。予想に反して時々太陽が覗く穏やかな天気であり,恵山の見事な火口の景観を満喫できたのみならず,火口原に咲く多くの花々を観察することが出来ました。また,海岸の植物のこれからの賑わいを予感させるように,ゼンテイカが咲き始めていました。

 昨年度の本実習は,のべ18日間の実習で雨による中止・延期は一度も無しという,奇跡的幸運に恵まれました。こんな幸運は二年も続くはずはないだろうとは言え,取りあえずは1サイクル分を函館の優れた自然景観を味わいつつ終えることができ,一安心です。この経験により,学生諸君が更に自然に対しての興味・関心を深めてくれることを,期待したいものです。