- 季節のトピックス -
初冬の林床は緑でした−逞しく越冬するシダ植物たち
(2003年12月初旬)

 根雪になる前に木の実の写真を撮ろうと、南茅部町のお気に入りの谷に行きました。しかし、冷夏の影響で実りが少なかったためか、例年になく寂しい光景でした。たぶん、鳥や小動物たちに食べられてしまったのでしょう。ムラサキシキブの実のみが、かろうじて残っていました。
 ところが、林床にやけに緑が目立つので、よくよく見ると何種類ものシダ植物が、コケ植物に混じって越冬しているのです。シダ植物は、目立つ花がなくまた類似した形態をしているものが多いために、同定が難しい植物ですが、緑のままに越冬するものは北海道では比較的少ないので、私でも何とか名前を決めることが出来ました。
 まずはオシダ科の植物が三種、寒さにめげずに頑張っていました。夏場と違い寝てしまいましたが、叢生する葉が圧倒的存在感を示すオシダがまずは筆頭でしょう。大きな頂羽片とその最下部に対になって付いている側羽片が、合わせて十字型に見えるのですぐ分かる、ジュウモンジシダも越冬準備を終えました。葉柄や中軸の黒い怖そうな鱗片が特徴のイワイタチシダも、岩場をびっしり埋めていました。
 他の科では、同じチャセンシダ科でも形態が大きく異なる二種が目立ちます。まずは、大きな単葉が特徴のコタニワタリです。北海道では比較的稀な、葉が羽状分岐するトラノオシダも疎らに生えていました。今ではすっかり支持率が落ちた、某首相を思い出させるシシガシラ(シシガシラ科)も、厳寒をものともしない風情でした。
 「季節のトピックス」は前回で終わりにするつもりでしたが、北海道の厳しい冬にも負けずに緑で越冬しているシダ植物の姿に感動し、私もこの逞しさにあやかりたく思い、番外編として本「トピックス」の本当の締めとしました。  (長谷 昭)


初冬の林床。 少なくとも4種のシダが見えます。 オシダの叢生する越冬葉。
オシダの葉の拡大。 ジュウモンジシダ イワイタチシダ
コタニワタリ トラノオシダ シシガシラ


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