授業の関係もあり,昨年度撮影した植物の写真を整理したところ,約300種類もの植物を撮影していたことが分かりました。中には,比較的稀な植物もあります。総集編No.1では内陸の植物を紹介しましたので,今回は日浦海岸の植物を紹介しましょう。
まず,初夏の頃,サンタロナカセの水がしたたりおちる断崖に,タヌキラン(カヤツリグサ科)が生育していました。これは北海道では道南だけに分布する植物です。その後海岸は一年中で一番美しい花の季節を迎えますが,それはすでに紹介済みですので,その後の夏から秋の植物を紹介しましょう。
真夏には,サンタロナカセの断崖の下の湿った斜面では,エゾミソハギ(ミソハギ科)とエゾカワラナデシコ(ナデシコ科)が美の競演です。そこから少し離れた断崖直下の湿地では,ガマとヒメガマ(いずれもガマ科)が仲良く道路際に並んでいて,夏の終わりには,そのソーセージ状の独特の穂を見せていました。ガマはごく普通に見られますが,ヒメガマはどこにでもあるというものではありません。更に目を海に突き出した断崖絶壁に転じてみると,驚くべき光景が飛び込んできました。環境省から絶滅危惧IA類に指定されているエゾマンテマ(ナデシコ科)が,あちこちに小群落を作っているのです。幸いにも人の手が届かないところが多いので,当分は安泰に生育し続けるでしょう。
さて,秋風が吹き始めるころ,センニンソウ(キンポウゲ科)の天下です。これも道南にしか分布しない植物ですが,その独特の実が名前の由来でしょうか?そしてこの海岸には,マツムシソウ(エゾマツムシソウ,マツムシソウ科)も咲いていました。多くはありませんが,キク科植物に似た頭花が特徴的な植物です。やがて海岸はコハマギク(キク科)の一人舞台になり,一年の花の季節も終わります。その中で,アオノイワレンゲ(ベンケイソウ科)もしぶとく頑張っていました。(長谷 昭)
![]() |
![]() |
![]() |
タヌキラン(6月3日撮影) | タヌキランの花序 | エゾミソハギ(7月30日撮影) |
![]() |
![]() |
![]() |
エゾカワラナデシコ(7月30日撮影) | ガマ(左)とヒメガマ(右) (8月27日撮影) |
ヒメガマの小群落 |
![]() |
![]() |
![]() |
エゾマンテマ(7月30日撮影) | センニンソウ(8月27日撮影) | センニンソウの実(10月14日撮影) |
![]() |
![]() |
![]() |
マツムシソウ(9月9日撮影) | コハマギク(10月14日撮影) | アオノイワレンゲ(10月14日撮影) |