- 季節のトピックス -
函館山の春と春の終わりを覗きに行きました(2007年5月12日,26日)

 函館山の植物は,その種類の豊富さと貴重な植物の存在により,多くの植物愛好家によっても注目され,函館植物研究会によって持続的に調べられてきました。しかし,残念ながら,全体を網羅するような植物リストは,古いものしかありません。また,図鑑類については,今から30年近く前に,私の前任の教授が,「函館山の植物」という題名の図鑑を北海道新聞社から刊行しましたが,間違いが多くて評判は必ずしも良いものではありませんでした。それ以来,魅力あるフィールドとは思いながらも,私自身は,敢えて函館山を学生実習のフィールドとはしませんでした。
 それから1/4世紀経ち,著者も亡くなりまた教員養成課程も無くなりましたので,呪縛から解き放されたように,新課程の学生実習を兼ねて定期調査を行うこととしました。一回目は5月12日の春真只中でした。更に,ある植物の名前の確認と次回の調査の下見のために26日にも,短時間ですが春の終わりの函館山に出かけました。この両日に確認した植物の中で,今まで撮影しなかったものや函館山を特徴付けるものを中心に紹介しましょう。尚,今回用いた写真はすべて5月12日撮影のものです。一部,学生が写した写真を使いました。
 さて,今年度は山頂直下のツツジ山駐車場に車を止め,標高の高い尾根沿いを中心に調査する予定です。まず,目についたのはヤナギ類(ヤナギ科)です。入江山山頂一帯は,キツネヤナギの群落でした。このタイプ標本は函館産だそうですので,恐らくはこのあたりで採集されたものと思われます。更に尾根直下に続く山道を進むと,イヌコリヤナギ,バッコヤナギ(ヤマネコヤナギ)そしてオノエヤナギとヤナギの木が続きます。バッコヤナギはすでに実ですが,他はまだ開花期でした。しかし,26日にはすべてが実の状態でした。
 さて,春と言えばスミレ科の植物です。特に目立ったのはタチツボスミレで,全山の随所に群落を作っていました。更に,千畳敷まで行くと,オオタチツボスミレ,ツボスミレとお馴染みのスミレが咲いていました。少し小高いところには,ニオイタチツボスミレが一輪だけありました。北海道では道南だけに分布しているものです。更に,やや下に降りた登山道の横では,ヒカゲスミレがミニ群落を作っていました。26日でも,まだまだスミレは勢いがありました。
 函館山を代表する植物と言えば,この時期はなんと言ってもコジマエンレイソウ(ユリ科)です。尾根沿いにはありませんが,少し下がった登山道沿いの随所に生育していました。一方,すぐには同定できない植物も結構ありました。ここでは,帰って来てから同定したミヤマハコベ(ナデシコ科)とミヤマハタザオ(アブラナ科)を紹介しましょう。実物を採集することが出来ませんので,現地で26日に再確認しました。
 26日の下見の感じでは,次回(6月9日を予定)は間違いなく初夏の植物に置き換わっているでしょう。これからも,私の知識を越えた植物たちがどんどん出てくる予感を感じさせる初日でした。 (長谷 昭)


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キツネヤナギ(雌花) イヌコリヤナギ(左雄花,右雌花) バッコヤナギ(雌花)
オノエヤナギ(雌花) タチツボスミレ(距が紫です) オオタチツボスミレ(距が白いです)
ツボスミレ(矮小です。多少ピンぼけでした) ニオイタチツボスミレ(葉は花の真下のもの) ヒカゲスミレ(白花です)

コジマエンレイソウ

ミヤマハコベ

ミヤマハタザオ


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