- 季節のトピックス -
函館山と亀田山地に初夏を見ました─その1(2007年6月1日)

 函館山は典型的な陸繋島であり,潮風の影響を強く受けているために,亀田山地側とは植生においてかなりな違いが認められます。しかし,距離的には両者は近接しているし,何よりも気候的にはほとんど同じであるので,共通する植物も勿論多く存在します。今回は,初夏に入ったばかりの函館山と亀田山地で,違いが見られた植物と,共通していた植物を紹介しましょう。
 亀田山地側としては,松倉川中流域を継続的に調査する予定でしたが,あまりにも笹が多いのとダニが心配でしたので,新中野ダムのダム湖上流の亀田川沿いに調査地を変更しました。笹も少なく,渓流も美しい景勝地です。最初の調査は6月1日に行いましたが,とにかくタチカメバソウ(ムラサキ科)が多い地域でした。そして,低木のコマガタケスグリ(ユキノシタ科)も非常に目立ちました。また,ヒトリシズカ(センリョウ科)も比較的多く咲いていました。更にもう花も終わりでしたが,ミヤマエンレイソウ(シロバナエンレイソウ)の一品種と言われているムラサキエンレイソウ(ユリ科)も生育しており,また近縁のクルマバツクバネソウ(ユリ科)もありました。お馴染みのシラネアオイ(シラネアオイ科)は,まだ頑張っていました。コンロンソウ(アブラナ科)も咲き始め,やがてはこの花が初夏の主役となることでしょう。ノビネチドリ(ラン科)も随所に見られましたが,他にもラン科植物が沢山ありそうな地域でした。
 さて,この調査地に至る道沿いにも,興味ある花が咲いていました。その一つは野球のバット材となるアオダモ(モクセイ科)です。毎年は花を付けないということですが,今年は比較的目立ちました。そして,なんと言っても見事だったのはウワミズザクラ(バラ科)です。今までに見た中では最も大きな木でした。これも,道内では道南にしか分布していないと言われている植物です。
 それにしても気になったのは,帰化植物のハルザキヤマガラシ(セイヨウヤマガラシ,アブラナ科)です。調査地として選んだ地域の入り口近くに,大群落を作っていました。この植物は,函館山の千畳敷近くでも繁茂しており,在来種を圧迫しないか心配です。そして,更に私を悩ませそうなのは,沢山のカヤツリグサ科の植物です。ここでは比較的分かりやすい,アズマナルコを紹介しましょう。まだ成長途中の若い植物体です。
(長谷 昭)


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タチカメバソウ コマガタケスグリ ヒトリシズカ
ムラサキエンレイソウ(枯れかかっています) クルマバツクバネソウ シラネアオイ(もう終わりです)
コンロンソウ ノビネチドリ アオダモ(来年は見られません)

ウワミズザクラ

ハルザキヤマガラシ

アズマナルコ


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