残暑が例年になく厳しかったとはいえ,野山はすでに秋の気配が色濃く漂っています。秋晴れの一日,今年度最後の函館山での植物観察実習です。まだ,紅葉にはほど遠いとはいえ,秋の開花植物のピークを過ぎてしまい,山は花期の長いキク科とタデ科の植物が特に目立ちます。キク科では,まずはアキノキリンソウが出迎えてくれましたが,典型的なものとやや異なります。オオアキノキリンソウ的特徴も持っていますので,詳しく調べる必要がありそうです。夏から咲き続けているオオノアザミもまだ勢いがあります。ハンゴンソウも場所によっては目立ちます。エゾノコンギクも真っ盛りです。そして,湿った林床ではサワアザミが大きな株を作って大型の頭花を垂れていました。
白花系では,シラヤマギクは最盛期を過ぎましたが山の西側で,エゾゴマナは全山で目立ちます。そして,要塞跡では,秋の海岸の岩場を代表するコハマギクが,石垣の隙間に根を張って開花していました。
キク科に大きさでは負けますが,随所にタデ科の植物も群落を作っています。ここでは全山で見られるハナタデとタニソバを紹介しましょう。
さて,函館山ではトリカブト(キンポウゲ科)も沢山生育していますが,大部分はオクトリカブトのようです。ここでは比較のために,亀田川上流域で撮影したエゾトリカブトも紹介しましょう。世界のトリカブト属の中で後者が最強の,前者が二番目の強さの毒を持つと言われています。
函館山は採集禁止地区なので,他の地域では稀な植物も保存されて生育しています。しかしそのために,微妙な違いを写真だけで判定しなければならないことも多く,同定の間違いをあわてて訂正することが頻繁にありました。特に,アキノキリンソウのように個体変異が大きい植物は,同定者泣かせです。しかし,同時に写真技術を磨くにはちょうど良い機会でした。微妙な種に特有な特徴をとらえるように撮影するためには,それなりの技術が必要ですし,また,植物に対する知識も必要とされます。大変勉強になった半年でした。(長谷 昭)
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変異の大きい植物です。 |
花期が非常に長いです。 |
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エゾノコンギク | サワアザミ 巨大な株です。 |
シラヤマギク 葉が広くハート型です。 |
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エゾゴマナ 葉は先がとがった長楕円型です。 |
コハマギク たびたび登場します。 |
ハナタデ 花がまばらに付きます。 |
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葉の切れ込みが浅いです。 |
葉が全裂しています。 |