2008年の春は,例年よりも1週間以上も速く過ぎて行きます。山の緑もどんどん濃くなって来ました。季節の進行に遅れまいと,植物の定期調査を兼ねた学生の野外実習はすでに5回になり,延べ30人ほどの学生が春の植物を観察しました。その間撮り貯めた写真の整理が出来ぬまま,多忙さの中に埋没しそうです。そこで,新年度の最初として,多少難しい課題に敢えて挑戦してみました。
春と言えばスミレ,スミレと言えば春です。しかし,スミレ類は個体変異が大きく,同定が難しい春の植物の代表格です。ここでは,4月下旬から5月上旬にかけて,道南のあちこちで撮影したスミレ科スミレ属の植物(スミレ類)を紹介しましょう。同定の間違いがありましたら,ご指摘下さい。
大学構内の桜で1番最初に咲くオオヤマザクラが咲き始めたころ,キャンパス内のスミレ1号とも言える白花のニオイスミレが満開になりました。葉の形と花色から,当初マルバスミレと間違えましたが,北海道大学総合博物館の高橋教授の同定により,ニオイスミレのアルビノと分かりました。最近は,北大キャンパスも含めて,あちこちで増えているとのことです。確かに,群生地には芳香が漂っていました。
山野では,ミヤマスミレがまず咲き始めました。その1変種であるフイリミヤマスミレが見晴公園で咲いていました。また,ほぼ同時にヒナスミレも咲いていましたが,同じくその1品種であるフイリヒナスミレも見晴公園に生育していました。
山野はスミレ類の最盛期に入り,スミレサイシン,ヒカゲスミレ,オオバキスミレの1品種であるフチゲオオバキスミレ(赤紫色の蕾が1番分かりやすい特徴です。亀田半島に生育しているものは,ほとんどこれのようです),そして,川汲公園ではナガハシスミレ(テングスミレ)が独特の長い距を立ち上げて群生していました。
しかし,これらのスミレ類は花期が短く,お馴染みのオオタチツボスミレ(距が白),タチツボスミレ(距が紫。写真のものは茎や葉に毛があるので,正確にはその1変種のケタチツボスミレ),そしてツボスミレ(ニョイスミレ)が目立ち始めました。季節は,初夏に向けて大急ぎで進んでいます。(長谷 昭)