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北限のシノブも冬支度でした(2008年10月19日)

 シノブは,熱帯を中心に分布しているシノブ科の中で,唯一冷温帯域まで生育範囲を広げている日本を代表するシダ植物の一つです。樹幹や岩上に生育する着生シダであり,乾燥に強いために,古来からシノブ玉として空中に吊して鑑賞した代表的な観葉植物でもありますが,もともとは暖かい地域のものですので,北海道では渡島地方の一部にしか分布の報告がありません。
 さて,5年ほど前に,函館市の蛾眉野で信州大学の佐藤利幸教授によって発見されたシノブは,恐らくは,専門家が確認した最北限のものと思われますが,年々勢力が衰えて行くようで消滅が心配されます。今年も,遅ればせながら観察に行きました。もうすでに黄葉していましたが,心配通り昨年よりも更に葉の数が少なくなっていました。一方,峠を越した戸井側で私が発見したもう一本の樹上のシノブは,逆に年々勢力を増しているようで,今年も見事な生育ぶりと黄葉を見せてくれました。こちら側の方が海霧の影響を強く受けるために,空中湿度が高いことが幸いしているのでしょうか?
 今回はシノブの観察が主目的でしたが,その近くには同じく着生シダのホテイシダ(ウラボシ科)が生育していました。こちらはごく普通に見られるものですが,かなり葉身が細かったので,一瞬別のシダかと思いました。シノブと同じ夏緑性ですので,すでに一部は枯れつつありました。
 峠では,ウメバチソウ(ユキノシタ科)が最後の頑張りを見せていました。そこを下った海岸では,夏の花であるはずのエゾマンテマ(ナデシコ科)が数株,多くの枯れた仲間を尻目に,日当たりの良い岩場でひっそりと咲いていました。環境省から絶滅危惧種に指定されているとは思えない逞しさです。しかし,厳しい冬はもう目の前です。いずれの植物もあと半月後くらいには,長い冬の眠りにつくことでしょう。(長谷 昭)


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北限(?)のシノブが着生する枝
以前はもっと賑やかでした
シノブの拡大
黄葉した3枚の葉のみです
戸井側のシノブ1
すごい数の葉です
戸井側のシノブ2
1の上の樹幹のものです
ホテイシダ
まだ青々としたものです
ホテイシダの黄葉
丸い胞子嚢群が見えます

ウメバチソウ
峠付近の群落です

エゾマンテマ
今の時期に咲いているとは!

シノブが生育する山並み


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