気孔形成の制御機構を解明!

Lynn Jo Pillitteri, Daniel B. Sloan, Naomi L. Bogenschutz and Keiko U. Torii (2007)
Termination of asymmetric cell division and differentiation of stomata.(非対称分裂の停止と気孔の分化。)
Nature Vol. 445, No. 7127, pp. 501-505.(2007年2月1日号)

Cora A. MacAlister, Kyoko Ohashi-Ito and Dominique C. Bergmann (2007)
Transcription factor control of asymmetric cell divisions that establish the stomatal lineage.(気孔細胞系列を確立する非対称細胞分裂の転写因子制御。)
Nature Vol. 445, No. 7127, pp.537-540.(2007年2月1日号)

 植物が陸上に進出し繁栄するためには,植物が新しいガス交換装置を獲得し,乾燥の危険に常に晒される陸上において,効率よく光合成を行うことが必須条件であった。このガス交換装置こそ気孔であり,この顕微鏡レベルの小さな穴の活動が植物の生活を支えているのみならず,地球全体の炭素循環や水循環に大きな影響を与えている。
 ここで紹介するアメリカの二つの研究グループによる論文は,シロイヌナズナにおけるSPEECHLESSSPCH),MUTEFAMAという近縁の三つの遺伝子の産物である塩基性へリックス・ループ・へリックスタンパク質(bHLH,遺伝子調節タンパク質(転写因子)として機能)が,順次作用して気孔を分化させることを,示している。
 まず,SPCHタンパク質が気孔(正確には孔辺細胞)の前駆細胞であるメリステモイド母細胞に非対称分裂を行わせ気孔細胞系列を作る。次にMUTEタンパク質が非対称分裂を停止させ,メリステモイド細胞の孔辺細胞母細胞への分化を引き起こす。最後に,FAMAタンパク質が孔辺細胞としての分化・形態形成を行わせる(下図参照)。
 以上の結果は,ごく近縁なbHLH転写因子類が,動物の筋細胞や神経細胞などの分化と同様に,植物の細胞種の分化に用いられていることを示している。


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