Kojima, Yasuo Nagato, Hitoshi Sakakibara
and Junko Kyozuka (2007)
Direct control of shoot meristem activity by a cytokinin-activating
enzyme.(サイトカイニン活性化酵素によるシュート分裂組織活性の直接的制御)
Nature Vol. 445, No. 7128, 652-655.(2007年2月8日号)
サイトカイニンは名前の由来の通り,培養組織において細胞分裂とシュート形成を促進する物質として最初に記載された。その後天然サイトカイニンとしてのゼアチンの発見を経て,植物ホルモンとして細胞分裂やシュート形成の促進のみならず,植物の成長及び発生において様々な生理的役割を果たしていることが明らかにされた。
他の植物ホルモン同様,サイトカイニン活性は,合成,分解,そしてグルコシル化等の不活性化修飾(本来的には貯蔵や輸送の形態である)などによって調節されていることが知られているが,茎頂分裂組織等の特定の組織での活性制御機構については,まだ未解明の部分が多い。
東京大学の倉川らは,茎頂分裂組織の維持に欠損があり,極めて貧弱な花序しか形成しないイネの突然変異体lonely guy
(log)を用いて,ポジショナルクローニングにより野生型遺伝子LOGを得て,その組織特異的発現と遺伝子産物の機能解析を行った。その結果,LOG遺伝子は茎頂分裂組織の先端で特異的に発現していること,またLOGタンパク質が活性型サイトカイニン合成の最終段階で働く,未報告のサイトカイニン活性化酵素であることを明らかにした。すなわちこの酵素は,前駆体であるサイトカイニンヌクレオチドから糖リン酸部分を一気に分解することにより,活性型遊離サイトカイニンを茎頂分裂組織に供給し,これによって分裂組織としての活性を維持させるのである。
以上のような,サイトカイニンの不活性型から活性型への変換を起こす酵素の組織・細胞特異的発現は,活性の不要な組織や時期にサイトカイニンの活性化が起こるのを回避するための,効率的な機構と評価されている。