表皮が植物の大きさを決定する!?


Sigal Savaldi-Goldstein, Charles Peto and Joanne Chory (2007)
The epidermis both drives and restricts plant shoot growth.(表皮は植物のシュートの成長を促進も制限もする。)
Nature Vol. 446, No. 7132, pp. 199-202.(2007年3月8日号)

 生物のサイズは遺伝的に決まっているが,植物や動物が最終的なサイズにまで成長する機構はほとんど解明されていない。高等植物のシュートは,表皮組織表皮下組織(皮層など),および内部の基本組織と維管束組織という3つの主な組織系を基本とする,単純で保存された体制をもっている。成長の促進や制限がどの組織系によるかという問題は,100年以上にわたって議論されてきた。
 本論文でSavaldi-Goldsteinらは,植物ホルモンの一つであるブラシノステロイドの生合成や応答に関する変異を持ったシロイヌナズナの矮性突然変異株と,その様々な形質転換体を用いて,ブラシノステロイド受容体またはブラシノステロイド生合成酵素が表皮で発現した場合には矮性表現型を救済し成長促進するが,維管束系で発現された場合はそうではないことを明らかにした。また,これらが発現する部位によっては,成長を阻害することを見いだした。以上のことより,表皮は非自律的シグナルを基本組織に送ることによって,シュートの成長を制御すると結論付けた。但し,このシグナルの実体は不明であり,ブラシノステロイドそのものではないようである。
 尚,植物の大きさは,細胞数と細胞の大きさによって決まるが,ブラシノステロイドは植物の遅い時期の成長段階である植物細胞の拡大(伸張・肥大)成長を促進し,細胞分裂には他の植物ホルモンが作用することが示されていることと,また,オーキシンやジベレリン等の作用も成長には不可欠であるので,以上の結論は,あくまでも,表皮による成長制御機構の一側面(ブラシノステロイドが関与する)を示しているものと思われる。

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